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02-28(日)

「真綿荘の住人たち」 島本理生



レトロな下宿、真綿荘に集う人々の恋はどこかいびつで滑稽で切ない……。不器用な恋人達、不道徳な純愛など様々なかたちを描く。




<感想> ★★★★★

本書は島本理生さんの最新刊です。 真綿荘という下宿を舞台にした

連作短編ですが、本書では連作短編の基本である人称の統一を意識

的に無視しています。 それを面白いと感じるか、煩わしいと感じるか

によって評価が分かれるように思います。


さて、読み始めの第一章「青少年のための手引き」は上京する18歳の

大和君を主人公に据えて、読みやすいつくりになっています。 私の世

代で下宿の物語といえば『めぞん一刻』ですが、そんな雰囲気の作風だ

と思っていると・・・・。 


メインキャラクターは、18歳の男子大学生から30代半と思われる女性

で、章を重ねるたびに深みを増していきます。 中盤に用意されている

「シスター」「海へ向かう魚たち」
の二編がもっともオーソドックスな恋愛

小説に仕上がっていますが、著者の真骨頂は最終章の「真綿荘の恋人

たち」
であろうと思います。


ここで、展開する綿貫さんの恋愛模様はいびつです。 『あなたの呼吸が

止まるまで』
『大きな熊が来る前に、おやすみ』と同じ底流をなしています

が、島本作品で30代の女性をメインキャラクターに持ってくるのは初め

てのことではないでしょうか?ここで語られる特殊な恋愛観や、無作為の

作為を客観的に描くさまは、島本理生という作家にとって重要な通過点に

なるのではないかと思います。


通過点といえば、中年男性の一人称で語られる「押入れの傍観者」は、新

境地的な位置づけができると思います。 読書メーターの感想に「桜庭

一樹がややマイルドになった感じ。」
とお書きになっている方がいらっ

しゃいましたが、フムフムと肯いてしまいました。


島本理生公式ブログ

↑今度は期間限定ではないようです。



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02-27(土)

「症例A」 多島 斗志之

神科医の榊は美貌の十七歳の少女・亜左美を患者として持つことになった。亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフの心理をズタズタに振りまわす。榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢で対処しようと決めた。しかし、女性臨床心理士である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。一歩先も見えない暗闇の中、広瀬を通して衝撃の事実が知らされる…。正常と異常の境界とは、「治す」ということとはどういうことなのか?七年の歳月をかけて、かつてない繊細さで描き出す、魂たちのささやき。


<感想> ★★★★☆

この本は良く売れたようで、ブック○フに在庫が豊富です。 前から気になっ

ていましたが、あらすじにある解離性同一性障害(多重人格)と600頁弱の分

厚さにビビッて手に取るのを躊躇していました。 しかし、前回読んだ多島作

品が良かったので著者を信頼してチャレンジすることにしました。


さて、解離性同一性障害(多重人格)はダニエル・キース『24人のビリー・

ミリガン』
で広く知られるようになりましたが、正直言ってこれをテーマにし

た小説には興味本位で取り上げたキワモノが多いように思います。 本書に

関していうならこのテーマを含めた精神疾患を真摯な姿勢で描いています。 

巻末に記された参考文献の多さはそれを如実に裏付けています。


唐突なラストは尻切れトンボ感が否めませんが、本筋と平行して描かれるエ

ンターテイメント色の強い博物館の話は破綻もないし、このふたつの物語が

収斂していくさまと著者の緻密な文章力はそれを補って余りあると思います。 

多重人格モノで痛い目にあった方におススメします。
 
02-21(日)

「七夕しぐれ」 熊谷達也


新緑まぶしい春。小学五年生の和也は県内の小さな町から憧れの仙台市に引っ越してきた。隣町に住む同級生ユキヒロとナオミと友達になろうとする和也に対して彼らは冷たい態度を取る。二人がクラスで浮いた存在で、江戸時代から続く因習がその原因であることを和也は知る。偏見にとらわれない子供たちの無垢な姿と、昭和の時代背景をノスタルジックに描いた傑作。


<感想> ★★★☆☆

本書は小学生を主人公にした三丁目の夕日・仙台版といったところです。

田舎から転校してきた少年の心理や、当時の教室の様子などはよく描

けています。 文章も平易で、おそらく主人公と同世代でも読みこなすこ

とができるし、イジメに対して前向きに解決しようとする少年の姿勢は感

動的です。


ただ、ここに差別問題を持ち込んでいるのはいかがなものかと思います。

著者は子供の目から見た差別問題という描き方をしたかったんだと思い

ますが、あたかも子供たちの勇気ある行動や、理解のある大人たちだけ

で、それを解決できるのではないか?というような安易な展開が気にな

りました。


ムズカシイことを言うつもりはありませんが、もう少し深く掘り下げる必要

のあるテーマなんだろうと思います。 


 
02-20(土)

「贋世捨人」 車谷長吉



私は愚図で、腑抜けだった。大学を出て、広告代理店に勤めるも、金儲け主義に嫌気が差し、辞めてしまう。その後、職を転々とし、流れ流れて料理屋の下足番になった。世間に背を向け、抜き身で生きていこうとした青年期から小説家になるまでの葛藤を執拗なまでに描きこんだ、私小説作家・車谷長吉の真骨頂。


<感想> ★★★★☆

車谷作品は5冊目になります。 すっかりハマってしまいました。 もし、ど

こかですれ違ったら(ないとは思うけど)思い切ってアニキ!と声を掛けて

みようと思います。(笑) 


さて、あらすじに私小説作家・車谷長吉の真骨頂。と書かれていますが、

本書は著者が大学を卒業してから小説家になるまでが書かれています。 

時代は高度成長期からバブル崩壊という流れにありますが、そんなこと

はお構いなく自らを深く掘り下げていきます。 

広告代理店のサラリーマンから新左翼雑誌の編集者。 その後、料理屋

の下足番や板場を経て小説家に至る道のりは、現代の隠者文学といった

感じですが、ちょっと変わったオッサンの生きざまを描くドキュメンタリーと

して読んでも迫力があります。 


小説を書けと勧める編集者とのガチンコのやりとりもナマナマしいんだ

けど、精神科医になった友人との静かなやりとりが胸に響いてきます。 

この中で出てくる風呂桶に釣り糸を垂れる患者の話は、引用されている

のをどこかで読んだことがあります。 やたら印象に残っていましたが、

思わぬところで元ネタと出会えました。


 
02-14(日)

「離愁」 多島斗志之

昔の美貌を残しながらも無表情、徹底して人とのかかわりを好まなかった藍子叔母。謎に満ちた叔母の人生に、わたしは物書きとしての興味をかきたてられた。叔母に届いた手紙と、ある男の手記。調べていくうちに、若き日の叔母の恋人は、ゾルゲ事件で投獄されていたことを知る。戦中から戦後、そして現在へと、脈々と続く連鎖の不思議。昭和という時代に翻弄されながらも、気丈に愛を貫き通した藍子―。『症例A』の多島斗志之が描き切った、渾身の純愛小説。


<感想> ★★★★★

本書は文庫改題されて『離愁』となっていますが、ハードカバーが上梓さ

れた時のタイトルは『汚名』です。 ずいぶん前ですが、どこかの読書サ

イトでベタ誉めされていたので手に取ってみた次第です。 多島斗志之さ

んは初読みですが、過去に二回直木賞候補にもなっている中堅どころの

作家さんのようです。


さて、私が読んだ『汚名』の帯には文芸ミステリーと書かれていますが、

文庫版のあらすじを見ると渾身の純愛小説となっています。 ヲイヲイな

感じですが、一人称形式の文芸作品としても読んでも、ミステリー要素

の強い恋愛小説として読んでもそれなりに満足できる作品と言えると思

います。


周囲から嫌われていた叔母の過去を遡るという筋立てで、時代は主人

公が子供だった高度成長期と現代。 そして主人公の知らない時代で

ある戦前を行きつ戻りつ展開して行きます。 関係者のほとんどが鬼

籍に入っているせいもあって、細い糸を手繰りながら事実に辿り着く過

程はスリリングです。 ゾルゲ事件という素材はベタといえばベタですが

ジョン・ル・カレを彷彿とさせる描き方は秀逸で、叔母を知る関係者の

手記の使い方は巧いと思います。


戦前・戦時中の特殊な状況下にある恋愛に関しては好みの問題もあ

ると思いますが、抑制の効いた文体は、あらゆる読者の胸に訴えか

ける力があるように思います。 


文芸色の強いミステリーや恋愛小説。 昭和の回顧小説がお好みの

方に強くおススメします。


著者の多島斗志之さんについて調べる過程で、昨年の12月19日

から行方不明であることを知りました。 

一読者として、ご無事でいらっしゃることを心からお祈りします。

父、多島斗志之を探しています。

 
02-12(金)

「掏摸」 中村文則

お前は、運命を信じるか?東京を仕事場にする天才スリ師。彼のターゲットはわかりやすい裕福者たち。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎─かつて一度だけ、仕事を共にしたことのある、闇社会に生きる男。木崎はある仕事を依頼してきた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。もし逃げれば…最近、お前が親しくしている子供を殺す」その瞬間、木崎は彼にとって、絶対的な運命の支配者となった。


<感想> ★★★★☆

中村文則さんは芥川賞作家です。 なんとなく文学的に優れている

のはわかるけど、ストーリー小説として読むとイマイチの作品
という

のが芥川賞に対する個人的な見解ですが、授賞作の『土の中の子

供』
で中村文則さんがみせてくれた繊細な描写力や独特の緊迫感

には度肝を抜かれました。 吉田修一さんがそうであったように、エ

ンタメに路線変更したら大化けするのではないか?そんなことを思

ったりもしました。


さて、本書の主人公はスリの若者です。犯罪者を描くといえば、ク

ライムノベルとかピカレスクと呼ばれる派手なジャンルを想像しが

ちですが、一人称語りの物語はあくまで地味に進行して行きます。 

特に前半は、犯罪行為を生業とする主人公の存在を肯定するの

に頁数を費やしているので読者によっては退屈と感じてしまうかも

しれません。 


ストーリーが大きく動き出す後半は、展開の速さと著者の実力が

相俟ってエンタメとして読んでも申し分ありません。 

金持ちの財布を掏る主人公。 母親の指示で万引きを繰り返す

子供。 そして闇社会に巣食う圧倒的な悪。 反社会というカテゴ

リーの中で繰り返される擁護と支配。 しかし、閉塞した現代社会

は彼らの行動の基本となる悪のロジックを否定しえないようにも

思えます。


面白いだけのエンタメに飽きた方におススメします。

 
02-06(土)

「ラットマン」 道尾秀介


結成14年のアマチュアロックバンドが練習中のスタジオで遭遇した不可解な事件。浮かび上がるメンバーの過去と現在、そして未来。亡くすということ。失うということ。胸に迫る鋭利なロマンティシズム。注目の俊英・道尾秀介の、鮮烈なるマスターピース。



<感想> ★★★★☆

先日も直木賞にノミネートされた道尾秀介さん。若手の中では最も

直木賞に近い作家とされているようですが、なかなか授賞に至りま

せん。 まぁ~いろいろと要因はあると思いますが、この人のトンガ

リ具合が諸刃の剣になっているのではないかと思います。


さて、本書のタイトルはホラー小説を思わせますが、ラットマンとは、

心理学で用いられる多義図形のひとつだそうです。 見る人の思い

込みによって、ネズミに見えたり。 人の横顔にも見えたりする絵の

ことで、それがこの作品のテーマになっています。 


このテーマは最後まで揺らぐことがなく、ミステリーとしての肝にもな

っています。 客観視するならその点は大いに評価すべき点ですが、

個人的にはもう少し融通を利かせた方が、小説としてのリアリティー

があったのではないかと思います。 


家族を核にした青春小説としての側面も併せ持っていて、そちらは

秀逸のひとことに尽きます。 だからこそ、二転三転するストーリー

に不満が残りました。 ミステリー云々以前に、テーマを貫くという点

では必然なんだろうけど・・・。

感動的なラストもちょっと興醒めしてしまいました。


とは言うものの、それはあくまで私の好みに基づいた主観です。 

読者の評価も高いし、客観的には巧い作品であることを最後につけ

加えておきます。
 
 
02-05(金)

1月の書籍代


角田光代さんが、今流行のTwitterをはじめたらしい・・・

という噂を聞きつけたので、私もTwitter登録してみました。

一般人がツブやいて何が面白いのかよくわかりませんが、気

になっている有名人をフォローするのは、それなりに面白い

かもしれません。


作家さんの中では、今までお弁当ブログを日々更新していた

柴田よしきさんが怒涛のツブやきをしています。

書評家の大森望さんの「フォローしている」をチェックすると

作家さんたちのTwitterをたくさん見つけることができます。



作家といえば27日にサリンジャーが亡くなりました。

「ライ麦畑でつかまえて」は二回読みました。

10代で読んだときは面白さに気がつきませんでしたが、世

の中がインチキ野郎ばかりで構成されていることに気がつき

はじめた20代後半で読んだときに、激しく共感できました。

   

May he rest in peace.





というわけで1月の書籍代です。

13冊 8,703円

1月の満足度 48★ (レビューにつけた★の合計です)

1月はたくさん読めて、幸せな一ヶ月でした。


雑誌なのでレビューは書いていませんが、「文藝」春号

島本理生特集なかなかヨカッタです。



1月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4031ページ

星間商事株式会社社史編纂室星間商事株式会社社史編纂室

読了日:01月29日 著者:三浦しをん
金輪際 (文春文庫)金輪際 (文春文庫)

読了日:01月26日 著者:車谷 長吉
文藝 2010年 02月号 [雑誌]文藝 2010年 02月号 [雑誌]

読了日:01月24日 著者:
眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

読了日:01月23日 著者:ダニエル T.マックス
風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)

読了日:01月17日 著者:三浦 しをん
無理無理

読了日:01月16日 著者:奥田 英朗
わたしを離さないでわたしを離さないで
 
読了日:01月09日 著者:カズオ イシグロ
これでよろしくて?これでよろしくて?

読了日:01月05日 著者:川上 弘美
ありがとう、さようなら (ダ・ヴィンチ ブックス)ありがとう、さようなら (ダ・ヴィンチ ブックス)

読了日:01月02日 著者:瀬尾まいこ
都市伝説セピア (文春文庫)都市伝説セピア (文春文庫)
 
読了日:01月02日 著者:朱川 湊人
文豪さんへ。近代文学トリビュートアンソロジー (MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)文豪さんへ。近代文学トリビュートアンソロジー (MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)
読了日:01月01日 著者
ツアー1989 (集英社文庫)ツアー1989 (集英社文庫)

読了日:01月01日 著者:中島 京子
おはなしの日 (集英社文庫 あ 46-2)おはなしの日 (集英社文庫 あ 46-2)

読了日:01月01日 著者:安達 千夏

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