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11-30(月)

11月の書籍代


すっかり秋も深まり、初冬の雰囲気が漂ってきました。

事業仕分けやら、内藤・亀田戦などが世間の耳目を集めていた11月

でしたが、私の関心はタバコ税値上げです。 

直近の調査によれば、男性の喫煙率は30%、女性の喫煙率は10%

を割ったそうです。 メディアで流される禁煙補助のガムやパッチ。 最

近話題になっている電子タバコなるものを横目で眺めつつ、そろそろ

止め時かなぁ~などと考えてみたりもしますが、元来、依存体質の私

禁煙ガム電子タバコを止められなくなるのではないだろうか?な

どと思ってしまいます。 まぁ1,000円になったら止めざるをえないんで

すが・・・・。


寺田虎彦がこんなことを書いています。


先年胃をわずらった時に医者から煙草を止めた方がいいと云われた。

「煙草も吸わないで生きていたってつまらないから止さない」と云ったら、

「乱暴なことを云う男だ」と云って笑われた。 

もしあの時に煙草を止めていたら胃の方はたしかによくなったかもしれ

ないが、その代りにとうに死んでしまったかもしれないという気がする。 

何故だか理由は分らないが唯そんな気がするのである。


『喫煙四十年』 「中央公論」昭和9年8月

よくわかりませんが、私も唯そんな気がするんですよね。 


          


というわけで11月の書籍代です。

11月の書籍代 15冊 5,240円(@349円)


今月は漫画率高めでしたが、なんと言っても『いのちの初夜』が印象に

残りました。 わずか三年しか活動をしなかった作家の作品が70年後

の現代に読み継がれているって、単純にスゴいとコトだと思います。


11月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:3486ページ

ムショ医 1 (芳文社コミックス)ムショ医 1 (芳文社コミックス)
読了日:11月29日 著者:佐藤智美

製鉄天使製鉄天使

読了日:11月24日 著者:桜庭 一樹

聖☆おにいさん (2) (モーニングKC)聖☆おにいさん (2) (モーニングKC)
読了日:11月23日 著者:中村 光

新ブラックジャックによろしく 7 (ビッグコミックススペシャル)新ブラックジャックによろしく 7 (ビッグコミックススペシャル)
読了日:11月23日 著者:佐藤 秀峰

特攻の島 1 (芳文社コミックス)特攻の島 1 (芳文社コミックス)

読了日:11月22日 著者:佐藤 秀峰

赤い指赤い指

読了日:11月20日 著者:東野 圭吾

秋の牢獄秋の牢獄
読了日:11月15日 著者:恒川 光太郎

死顔死顔

読了日:11月13日 著者:吉村 昭

しずくしずく

読了日:11月12日 著者:西 加奈子

碇星 (中公文庫)碇星 (中公文庫)
読了日:11月12日 著者:吉村 昭

ロック母ロック母

読了日:11月10日 著者:角田 光代

壊れゆくひと (角川文庫)壊れゆくひと (角川文庫)
 
読了日:11月07日 著者:島村 洋子

いのちの初夜 (角川文庫)いのちの初夜 (角川文庫)

読了日:11月06日 著者:北条 民雄

悪果悪果

読了日:11月04日 著者:黒川 博行

パンドラの火花 (新潮文庫 く 28-2)パンドラの火花 (新潮文庫 く 28-2)

読了日:11月02日 著者:黒武 洋

読書メーター
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11-30(月)

「製鉄天使」 桜庭一樹

辺境の地、東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース“製鉄天使”の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出す─あたしら暴走女愚連隊は、走ることでしか命の花、燃やせねぇ!中国地方にその名を轟かせた伝説の少女の、唖然呆然の一代記。里程標的傑作『赤朽葉家の伝説』から三年、遂に全貌を現した仰天の快作。


<感想> ★★★☆☆

本書は『赤朽葉家の伝説』のスプンオフ(番外編)作品です。 

本編をお読みになった方は、タイトルをご覧になっただけでお分かりになる

と思いますが、第二部から派生する物語です。 主人公の名前などから考

えれば、毛鞠が書いた漫画をノヴェライズしたという設定がされているよう

です。


さて、はじめに申し上げておきますが、本書に本編(『赤朽葉家の伝説』)

イメージを期待するなら思いっきりハズしてしまいます。 あくまで、毛鞠が

作中で書いていた『あいあん天使!』のノヴェライズです。 更に言うなら、

冒頭のクセのある独特の文章に慣れないと最後までストーリーに入り込め

ないかもしれません。 


本編の感想でも書きましたが、私は毛鞠と同じ丙午生まれです。 80年代

の前半に中高生だったわけですが、あのころ蔓延っていた不良文化が余

すことなく描かれています。 今考えると何だったんだろう・・・と思うわけで

すが、当時の子供たちは熱病にうなされたように暴れまくっていました。


私も当時は改造したバイクで・・というのはウソですが、誰もが作り上げら

れたフィクションの世界を生きていました。 本書をヤンキーが主人公のド

タバタ小説と斬り捨てるのは簡単ですが、当時の雰囲気や登場人物のモ

ノの考え方などが、よく描けていて、笑いながらもフムフムと肯く場面が多

くありました。 


やっぱり三原じゅん子さんが好き。 いとうまいこさん(伊藤麻衣子)の代

表作は「不良少女とよばれて」だ!と思うバブル世代の方。  あるいは

ココ桜庭一樹さんを見て桜庭一樹最強!と思える方におススメします。


  
 
 
11-27(金)

「しずく」 西加奈子




そうか、あなたがいたんだ。迷っても、つまずいても、泣きそうでも。人生って、そう悪くない。「女どうし」を描く六つの物語。





<感想> ★★★★★

マーケティングという言葉があります。 どんな人たちに訴えかければ

商品が最も売れるのか? 本。とりわけ文芸書に関して言うなら、20

~40代の女性と団塊世代になるのではないかと思います。 もちろん

読者は幅広い層に分布していますが、それが消費行動(出版社の儲け)

に結びつく人たちは限られています。 それを踏まえるなら西加奈子

いう作家は、その最前線にいる一人です。


さて、デビュー作の『あおい』こそ、ちょっとトンガっていましたが、西加奈

さんは恋愛モノより、人情モノを得意としているように思います。 人

情モノと言っても、従来の演歌系ではなく、市場を意識したポップス系。 

友人同士や家族間で生じるであろう機微をユーモアを交えながらリアル

に描いていきます。 主人公の女性たちは、寒さを堪えながらセーター

を編んで
いませんが、泣きどころはしっかり抑えている。 それは、この

作品集のコンセプトとも重なります。 


好むと好まざるに関わらず、片意地を張って生きている女性が素直にな

る瞬間を描くさまが秀逸で、それが押し付けがましくない泣きどころにな

っています。
 

そこまで歌って、やめた。 私の目に、母の字が、飛び込んできた、

「ナベ」「しょっき」「ヤカンナド」

大きな大きな、ダンボールからはみ出してしまいそうな字だった。

その字を見ていたら、泣けてきた。

なんて大きな字、子供みたいな。 そう思って、笑いながら、泣いた。 

その涙はとても熱く、じわじわと体の奥から湧き出してきて、決して、

決して止まらなかった。
(『シャワーキャップ』)


↑もう、このあたりは、オッサンも泣きましたが、全米が泣いた!!状態

です。 


今年読んだ、短編集の中ではピカイチでした。 

猫がお好きな方には、表題作がおススメです。


 
11-22(日)

「赤い指」  東野圭吾


少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。



<感想> ★★★☆☆

東野圭吾さんといえばいくつかのシリーズ物がありますが、本書は警視庁

刑事加賀恭一郎を主人公とするシリーズの一冊です。 ちなみに最新刊の

新参者』もこのシリーズのようです。


さて、本書は幼女殺人を犯してしまった子供の犯罪を、隠蔽しようとする家

族の物語です。 事件は唐突に始まりますが、我が子の犯罪を隠蔽するま

でに至る父親の心理描写が巧みで、特に少女の遺体を公園に捨てに行く

あたりの緊迫感は、著者の実力をまざまざと見せつけられます。 ミステ

リーとしての枝葉は省かれているように思いますが、現代の家族が抱えて

いる闇をリアルに描いています。 牽引力もハンパではないので、これは

手紙』を凌ぐ作品に違いないと読み進めました。


後半のついてですが、大半の読者は評価しているようなので、あくまで少数

派の意見として申し上げるなら、過剰な演出と取ってつけたような謎解きに

興醒めしてしまったというのが正直な感想です。 


ここまで無理に面白くしなければ、マーケットからソッポを向かれてしまうと

いうことなのでしょうか? ちょっと複雑な気持ちになった一冊でした。




 
11-21(土)

「死顔」  吉村昭


生と死を見つめつづけた作家が、兄の死を題材にその死生観を凝縮させた遺作。それは自身の死の直前まで推敲が重ねられていた─「死顔」。明治時代の条約改正問題とロシア船の遭難事件を描きながら、原稿のまま残された未定稿─「クレイスロック号遭難」。さらに珠玉の三編を合わせて収録した遺作短編集。著者の闘病と最後の刻を夫人・津村節子がつづった「遺作について」を併録。


<感想> ★★★★☆

吉村昭が亡くなってから三年が経ちました。 

本書は遺作である『死顔』を収めた最後の作品集です。 

歴史モノやそれにまつわるノンフィクションで作家として成功した著者です

が、個人的には初期作品の雰囲気が好きです。 

その死の報らせを聞いた時に、吉村さんらしい亡くなり方だな・・・と感じた

のは、そのせいかもしれません。


さて、表題作に関しては、亡くなる直前まで推敲が重ねられていたとのこと

です。 私小説でその死生観が凝縮された作品に仕上がっています。 そ

れなりに迫力のある作品ですが、読者もある程度年齢を重ねないと、作品

の核に触れることが出来ないのではないかと思います。 人生の節目で読

み返するなら、その時々で異なる印象を持つ類の作品です。 


この作品集がきっかけで、吉村作品にもっと触れてみたいとお考えなら初

期の作品を強くおススメします。 明るい作品は少ないものの、キレのある

文章は研ぎ澄まされた刃を思わせます。


手に入りやすい本では↓



この小説集に入っている『少女架刑』がスゴすぎます。
 
11-21(土)

「秋の牢獄」 恒川光太郎

十一月七日、水曜日。女子大生の藍は、秋のその一日を何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になればすべてがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか―。まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる文体。心地良さに導かれて読み進んでいくにつれて、思いもかけない物語の激流に巻き込まれる―。数千ページを費やした書物にも引けを取らない、物語る力の凄まじさ。圧倒的な多幸感と究極の絶望とを同時に描き出す。

<感想> ★★★☆☆

本書は恒川光太郎さんの三冊目の作品集です。

とにかく一冊目の『夜市』が圧倒的にヨカッタので、比較するのは酷です

が、若干トーンダウンしている感は否めません。 とにかく売れたから

次を早く・・というのは作家の意思ではなく編集サイドの思惑だと思いま

す。 新人作家は大事に育てて欲しいものです。


さて、冒頭からセルジオ・越後チックになってしまいましたが、それはあ

くまで『夜市』と比較してということで、決して作品自体のクオリティーが

低いと言うわけではありません。 収められている三作の共通するテー

マは「囚われ」だと思いますが、その状況下にある主人公達の心理描

写が秀逸でした。 


『夜市』と同じティストの『神家没落』の評判がいいようですが、個人的に

『幻は夜に成長する』のサスペンスチックな展開に惹きつけられました。

 


 
11-15(日)

「碇星」 吉村昭


孤独を分かち合う七十すぎの三人の男たちを描く「喫煙コーナー」、定年と同時に妻に去られた男の心境を描く「寒牡丹」、葬儀に欠かせぬ男に、かつての上司から特別な頼みごとがきた表題作ほか全八篇。人生を静かに見つめ、生と死を慈しみをこめて描く作品集。




<感想> ★★★☆☆

本書は定年退職後の男性を主人公にした作品を中心にした作品集です。

定年退職後の孤独や虚脱感を巧みな筆で描いていくわけですが、これら

の作品が描かれた90年代前半と現在の経済状況は大きく異なります。 


そもそも定年まで勤め上げられるのか?それ以前にそれまで自分の属

する組織は存在しているのだろうか?という立場に立たされている現役

サラリーマンからするなら、感情移入が難しい作品だと感じました。


ちなみにタイトルの碇星とはカシオペア座のことです。

たしかに船の碇にも見えますよね。

 
11-14(土)

「ロック母」  角田光代


この短編集には、1992年から2006年までに書いた小説がおさめられている。これほど時間差のある小説をまとめて本にするのは、私にははじめてのことで、あっちをうろつき、引き返し、さらに迷い、今度はこっちをうろうろするような、頼りなげな足跡が、おもしろいほどくっきりと浮かび上がっているのではないか。……私はこの、迷える足跡をこそ、1冊の本にまとめたかったのだ。--<あとがきより>


<感想> ★★★★☆

本書はタイトルが奇抜ですが、装丁はもっと奇抜です。 表紙はもちろん側

面まで黒く塗られています。 黒いトイレットペーパーなるものが一時期、話

題になりましたが、そんな感じで書店でも異彩を放っています。 装丁に、

ホントに読みたい奴だけが覚悟して読め!

文句言わせねから!!

そこんとこヨロシク!!!


的な意味合いが含まれているような気がします。


さて、本書は92年初めて芥川賞候補になった作品から、直木賞を受賞し

てベストセラー作家となった06年までの作品が収められています。 いず

れも覚悟して読め!!の黒角田作品ばかりです。 

私自身『対岸の彼女』で、角田さんの存在を知った新参者なので、大きな

ことは言えませんが、それ以前の作家角田光代と、現在のベストセラー作

角田光代はある程度の乖離が見られるように思います。 あとがきで本

書の意味合いについて頼りなげな足跡と書かれていますが、私はその乖

離を修正するための作品集なのではないかと思います。


個人的には、瑞々しさの際立つ『ゆうべの神様』。 思いっきり黒角田の『父

のボール』
あたりが好きですが、『カノジョ』ダフネ・デュ・モーリア『レベッ

カ』
を思わせる巧さがありました。

角田光代ファン、強いて言うなら黒角田ファンに強くおススメします。

 


↑まだ売ってるんですね・・・
 
11-13(金)

「壊れゆくひと」 島村洋子


どこにでもいる普通の人々、あたりまえの日常生活が私の周りで少しずつズレていく。してもいないミスをあげつらう“いい人”と評判の同僚。自分はアイドルの恋人だと言い張る子持ちの友人。顔も思い出せないのに恋人だと手紙を送ってくる男。狂ってしまったのは私なのか。それとも周りの人々なのか。現実と虚構の狭間から滲み出す狂気を描いたサイコ・ホラー。



<感想> ★★★☆☆

あらすじにあるサイコ・ホラーと島村洋子さんの作風が結びつきません

でしたが、とりあえず読んでみました。


さて、最初はフツーの人だと思っていたけど、つきあいが深まるにつれ

この人とはちょっと合わないかも・・と思うことは時々あります。 それは

あくまで主観的な要因ですが、それに客観的な要因が加わると、この人

ちょっとヘンな人かも・・
という考えに至ります。 主人公は、この人ちょっ

とヘンな人かも・・
に取り巻かれています。 


職場で自分の聖域を荒らされたと誤解する先輩OL。

芸能人とつきあっているという妄想を持つ年上の女性。

思い込みで付きまとう男。


それに翻弄される主人公のキャラクターは、島村さんの持ち味が存分に

活かされていますが、それぞれが持ちあわせる「静かな狂気」を描くさま

は、どちらかと言えば山本文緒さんのそれに近いものを感じました。 


ただ、これでサイコ・ホラーは成立しません。 

また、騙されちまったかもなどと思っていると・・・・・。

やっぱり怖かったです。


島村洋子さんの違う側面を味わいたい方におススメします。

 
11-08(日)

「いのちの初夜」 北條民雄


東京東村山の全生園で、24歳の生涯を終った著者は、生前、苦悩の彷徨を虚無へ沈まず、絶望によってむしろ強められた健康な精神を文学の上に遺した。入園後わずか3年の余命を保つのみであったが「文学界」に掲載された「いのちの初夜」は大反響を呼んだ。独英訳により、海外でも強い感動を与えている。




<感想> ★★★★★

作者の魂(たましい)にふれる。 私小説を評する際にしばしば使われる

言葉で、私自身もレビューの中で何度か使った記憶があります。 しかし、

それは本来使われるべき作品にのみに、使うべき言葉なのではないだろ

うか?本書を読んでそんなことを考えました。


さて、巻末の年譜によれば作者の北條民雄は大正三年九月某日、某県

に生まれたとなっています。 19才で、当時は不治の病として恐れられ、

差別の対象であったハンセン病を発病します。 彼のプロフィールが曖昧

なのはそのせいです。 ハンセン病療養施設の中で書いた小説が川端

康成
に見出され、表題作は第三回(昭和11年上半期)芥川賞にノミネート

されています。 重症患者の姿にわが身の行く末を想い、失明の恐怖に

怯えながら、ハンセン病をテーマにした作品を手がけます。


表題作は、彼が療養施設(多磨全生園)に入院した一日目の夜を書いて

います。 ストレートな表現で当時の院内の様子が描写されています。 あ

えて言葉を選びませんが、それは悲惨のひとことにつきます。 

そこに身を置くことになる彼が吐露する心情は鋭い刃となって読む者の

胸を抉ります。


現代作家の作品に慣れている身としては なぜここまで書かなければなら

ないのか?
という疑問と幽かな怒りのようなものが湧いてくるほどです。

しかし、冷静に考えるなら、それこそが70年以上前に夭逝した作家の魂

(たましい)に触れた証だったような気がします。
 

「しかし、吸入なんかかけても、やがて効かなくなるよ。 だが

まあ君の眼ならここ五年や六年で盲目になるようなことはないよ」

「五年や六年でか」私はあまりにも短いと思われたのだ。

「今のうちに書きたいことは書いとけよ」

彼は真面目な調子でいった。 私は黙ったまま頷いた。 
(眼帯記)


しかし、彼はこの文章を書いた一年半後に療養所で生涯を終えます。 

享年24。 作家としての活動期間はわずか三年でした。


表題作は「青空文庫」でも読むことが出来ます。

 
11-07(土)

「悪果」 黒川博行



かつてなくリアルに描かれる捜査の実態と癒着、横領、隠蔽、暴力、…日本警察の真実のなかにあぶりだされる男たちの強烈な光と闇。





<感想> ★★★★☆

本書は第138回直木賞ノミネート作品です。 受賞作は桜庭一樹さんの

『私の男』でしたが、佐々木譲さんの『警官の血』と並んで話題になってい

た記憶があります。


さて、本書をひとことでいうならピカレスク小説です。 主人公は大阪府警

の暴力団担当の刑事(通称マル暴)。 捜査対象である暴力団から接待

を受けるのは日常茶飯事で、怪しげなジャーナリストと組んで恐喝まがい

の行為にまで手を染めています。 まさに悪徳警官という言葉がぴったり

くるキャラクターですがイマイチ憎めません。 


腐敗した警察組織の中に身を置いて、どうせみんな悪いことをしてるんだ

から自分もやらなきゃ損するんじゃないかという感覚。 高潔でいるより

易きに流れてしまう人間の弱さを巧みについているからではないかと思い

ます。 主人公の相棒が『なにわ金融道』を読み耽るシーンがありますが、

テイストは似ているかもかもしれません。 


しかし、本書の核は主人公が窮地に立たされる後半にあるように思いま

す。 ヤクザ、クラブホステス、学園理事長、不動産デベロッパー。 そし

て悪徳警官。 多彩なキャラクターを配した上で、あえて展開を複雑にし

て、良質の和製ハードボイルドに仕上げています。 


警察小説がお好きな方はもちろんですが、感情移入がしにくいピカレスク

小説は苦手と感じている方にあえておススメします。

 
11-06(金)

「パンドラの火花」 黒武洋


死刑制度廃止。そのとき、政府が扱いあぐねたのは、すでに判決が確定していた死刑囚たちだったが…。十六歳で家族六人をみな殺しにした横尾友也も、今や五十代の死刑囚。彼に更生の余地ありとする政府は、刑の執行停止を交換条件に、「ある人物」を説得して、その凶行を未然に防ぐことを命じた。果たして、罪とは償えるものなのか?罪と罰の根源を問うクライム・サスペンス。


<感想> ★★★★☆

黒武洋さんは以前『粛清の扉』という作品を読みました。 「バトル・ロワイ

ヤル」
的な展開にイマイチ馴染めなかったというのが個人的な感想ですが、

読者をグイグイ引っ張っていく力のある作家さんという印象をもちました。


さて、本書はいわゆる食いつきのいい作品で、冒頭からいっきに引きずり

込まれます。 ところがいきなりタイムマシンが出てきます。 あらすじを

読んでサスペンスをイメージしていた私は正直言って?????でした。 

しかし、その時点で思いっきり引きずりこまれているの退くに退けません。 


執行を待つ死刑囚がタイムマシンに乗って犯罪を犯した時代に帰って、そ

の犯罪を阻止するという筋立てで、阻止の方法は当時の自分と会って説

得するというものです。 チープと言えばチープな展開ですが、若い頃の自

分と直接向き合うというSFやファンタジィーでなければ許されない設定を

最大限駆使して描かれているのは、あらすじにある通りのクライム・サスペ

ンスでした。 


若い頃、自分が抱えていた深い心の闇に現在の自分が降りていくというシ

チュエーションと、それを描く筆が秀逸でたっぷり読ませてくれます。 

ところどころに織り込まれている人生の機微も絶妙で、読者によってはウ

ルウルきちゃうかもしれません。


語弊があるかもしれませんが、牽引力のある文章はコミック感覚で読み進

めることも可能です。 兎にも角にも面白い小説ないかなぁ~?という方

に躊躇することなくおススメします。 
 
11-01(日)

10月の書籍代


10月も終わりですが、私の夏休みも終わりです。

なにせ9日間の休みなので、こんなところに行ってみたい 

とか・・・

こんなコトをしてみたい 

などという思いはありましたが、すべて計画を立てる段階で

めんどくさくなってしまいました。


出かけたのは都内のみ。


水曜日

神田古本市に行きたいなぁ~と思いましたが、東西線  の

なかで極端に人ごみが苦手だった自分に気がつき、行き先を変更して

秋葉原ブックオフへ。(←最近品揃えイマイチだと思うのは私だけ?)

もちろん帰りの東西線も大混み・・・。


土曜日

品川の帰りにヴィーナスフォートに行ったら、なっ!!なんと停電で

全館閉鎖。(←パチンコ屋で一回経験があるけど、なんかぶっくり)


結局・・・・

好きな時間に起きて 

仕事にもドコにも行かず 

好きな時間に寝る 


というのが自分にとっては最高の贅沢だということに気がついた次第です。


          

というわけで10月の書籍代です。

今月は当たりが多くて読書の秋を満喫できました。


12冊 3,535円 (@294円)

10月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3267ページ

贖罪 (ミステリ・フロンティア)贖罪 (ミステリ・フロンティア)

読了日:10月30日 著者:湊 かなえ

赤目四十八瀧心中未遂赤目四十八瀧心中未遂

読了日:10月28日 著者:車谷 長吉

悼む人悼む人

読了日:10月27日 著者:天童 荒太

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

読了日:10月26日 著者:辛 淑玉,野中 広務

春のオルガン (新潮文庫)春のオルガン (新潮文庫)

読了日:10月17日 著者:湯本 香樹実

塩壷の匙 (新潮文庫)塩壷の匙 (新潮文庫)

読了日:10月15日 著者:車谷 長吉

バスジャック (集英社文庫)バスジャック (集英社文庫)

読了日:10月12日 著者:三崎 亜記

女中譚女中譚

読了日:10月10日 著者:中島 京子

寄生虫博士の中国トイレ旅行記 (集英社文庫)寄生虫博士の中国トイレ旅行記 (集英社文庫)

読了日:10月05日 著者:鈴木 了司

忌中 (文春文庫)忌中 (文春文庫)
 
読了日:10月04日 著者:車谷 長吉

浮世でランチ浮世でランチ

読了日:10月03日 著者:山崎 ナオコーラ

自由死刑 (集英社文庫)自由死刑 (集英社文庫)

読了日:10月02日 著者:島田 雅彦


読書メーター
 
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