プロフィール

きたあかり

Author:きたあかり
文芸書中心の読書日記です。
読書傾向はフリーエリアの円グラフを見てください。 サイトのご案内

フリーエリア
ひとこと掲示板
FC2カウンター
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

-----(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 
04-10(火)

「花桃実桃」 中島京子






【内容情報】(「BOOK」データベースより)
40代シングル女子まさかの転機に直面す。昭和の香り漂うアパートでへんてこな住人に面食らい来し方をふり返っては赤面。行く末を案ずればきりもなし…ほのぼの笑えてどこか懐かしい直木賞作家の最新小説。




<感想> ★★★★☆

父親の遺したボロアパートを管理するようになった40代の独身女性が主人公の本書は、連作短編形形式の作品です。


ボロアパートといえば70年代っぽい雰囲気ですが、似た設定の近作では三浦しをんさんの『小暮荘物語』や島本理生さんの『真綿荘の住人たち』。 伊藤たかみさんの『そのころ、白旗アパートでは』などがあります。 ぼろアパートものブーム??『めぞん一刻』再ブレイクの兆しかもしれません。(笑)


さて、前段であげた四作との大きな違いは40代独身女性の主人公に配している点で、そこが本書のキモです。 結婚に若干の未練を残しつつ、イイ感じに開き直っているキャラクターに好感を持つ読者は多いはずです。 私は小林聡美さんに置き換えて読み進めました。 


とにかく作品全体を覆う雰囲気がとてもいいです。 父親の愛人だった住人とのビミョーなギクシャク感や、男友達との距離感を描くさまも秀逸です。 脇役であるヘンな住人たち。 私は整形美女の日名子さんがツボでした。


近代文学のトリビュート作品を手がけていた直木賞以前の作品と比較するならとかなり読みやすくなっていますが、文章のクオリティーは維持されています。 中島京子さんイイ感じに化けている印象を受けました。 世代や性別を問わない作品ですが、笠智衆をご存知のない方は若干の予習をすると、それ以上に楽しめるはずです。




   




スポンサーサイト
 
04-03(火)

「しかたのない水」  井上荒野




【内容情報】(「BOOK」データベースより)
東京近郊のフィットネスクラブに集まる、一癖も二癖もある男と女…。平気で女を乗りかえる若い男。その男の美しい肉体を思い浮かべ自慰に耽る女。水泳コーチの妻は失踪し、団地の主婦は、昔の恋人の名前をつい呟いてしまう。脱サラした古本屋は、妄想癖のある受付嬢の虜となるー。誰もが世界からはぐれ、行先もわからずさまよっている。不穏な恋の罠に翻弄される男女を描く連作短編集。



<感想> ★★★★☆

井上荒野さんの作品は直木賞受賞をきっかけに読むようになりました。 『切羽へ』は直木賞作品のわりにはジミな作品で初読では「・・・・」でしたが、再読してみて井上荒野さんのすごさに気がつきました。 私自身、井上作品の核に触れているとは言いがたいわけですが、一冊読むごとに小説を読むレベルが上がっているような気になります。 


さて、そんな井上作品のなかにあって、恋愛小説にミステリー的な味付けをした本書はかなり読みやすい作品です。 井上荒野さんの真骨頂は男女間に漂う一瞬の不穏感を切り取る見事さだと思いますが、連作短編の本書ではそれが散発的に用いられていて読者を飽きさせることがありません。 


個人的には『クラプトンと骨壷』が一番ぐっときましたが、最終章のオチも巧みだと感じました。
仕事で何度かフィットネスクラブに行く機会がありましたが、平日の昼間にフィットネスクラブで漂っている独特の雰囲気ってあるんですよね。 そのあたりの描写も見事です。

とりあえず井上荒野さんを読んでみたい方、井上荒野ってジミ過ぎない??とお考えの方におススメします。


 
03-24(土)

「緑の毒」  桐野夏生






【内容情報】(「BOOK」データベースより)
妻あり子なし、39歳、開業医。趣味、ヴィンテージ・スニーカー。連続レイプ犯。暗い衝動をえぐる邪心小説。






<感想> ★★★★☆

本書は昨年の夏に出た桐野夏生さんの最新刊です。 図書館でいくら待っても順番が廻ってこないので「楽天」でポチりました。


主人公は、勤務医である妻の浮気をきっかけにレイプ魔と化してしまう39歳の開業医です。 男の嫉妬がテーマのひとつだと思いますが、それは今まで桐野さんが描いてきた女のそれと比較するならかなり無様です。 そのあたりが若干軽いような印象を受けました。 しかし本書を強く印象づけているのは主人公ではなく、周囲に取り巻く女性たちのような気がします。


浮気をしている妻。 不満を抱えているクリニックの職員。 彼女たちの言動にドロドロフェチの私はツボを押されまくりでした。(笑) さらに著者はレイプの被害者にも容赦がありません。 おそらく男性作家なら許されないだろというところにぐいぐい踏み込んでいくあたりも圧巻でした。 ただ、一人暮らしの女性が誰もいるはずのない部屋の中で見ず知らずの男に遭遇する恐ろしさは、男性の私も強く感じ取ることができました。 それも含めて、桐野さんの巧みな筆さばきを堪能することができます。


私自身も含めて、『東京島』以降の桐野作品に対してモヤモヤ感を抱いていた読者が多いように思います。 それを踏まえるなら、本書は久しぶりに「らしい作品」と言えるのではないでしょうか?


嫉妬はこわいものでありますな、閣下。
そいつは緑色の目をした怪物で、
人の心を餌食にして、苦しめるやつです。

(『オセロ』 シェイクスピア 三神勲訳)


 
03-13(火)

「誰かが足りない」 宮下奈都






【内容情報】(「BOOK」データベースより)
足りないことを哀しまないで、足りないことで充たされてみる。注目の「心の掬い手」が、しなやかに紡ぐ渾身作。偶然、同じ時間に人気レストランの客となった人々の、来店に至るまでのエピソードと前向きの決心。






<感想> ★★★★☆

本書は今年度の本屋大賞にノミネートされている宮下奈都さんの連作短編です。 今や売れ筋で書店の平積台を占拠しそうな勢いの宮下奈都さん。 角田光代さんなどと同年齢ですがお名前を聞くようになったのはここ4~5年ではないかと思います。 私はアンソロジーに入っていた『日をつなぐ』という作品が初読みでしたが、そのクオリティーの高さに打ち震えた記憶があります。


さて、本書はその装丁とタイトル、そして掲載誌(「小説推理」)からミステリーをイメージされている方も多いようですが、ミステリーの要素は一切ありません。 著者が最も得意とする癒し系の作品です。 主人公それぞれが抱える悩みは現代的でキャラ設定もリアルです。 文章も安定感があるし瑕疵のつけようもありませんが、個人的には心に響いてくる作品ではありませんでした。 正直いって「量産型」という印象を強く持ちました。


ただ、この作品、若い人には好評です。 そこで再度ナナメ読みをしてみて気がついたことがあります。 本書はもちろん、数ある宮下作品の中で主役を張るキャラクターの面々。 その共通項は、優しさや正直さ故に不器用で、厳しい現代社会にうまく溶け込めない若者たち。 欲にかまけた若者時代をすごしたバブル世代の私が思う以上に、今の若い人たちは危機に立たされているのではないか? そして、宮下奈都さんは直木賞獲って、もっとバリバリ稼いでいやるぜ!!などという考えではなく、そんな読者と向き合いながら作品を書いているのではなないか?という結論に至りました。 


もし、私の見方が間違っていないとするなら本書は決して「量産型」ではなく、著者の想いの詰まった作品と評価することができるのような気がします。 最近、作品を客観視することを重点においていたせいで、大事な何かを忘れていたのではないか・・・と気づかされた一冊でもありました。 







←私が初めて読んだ『日をつなぐ』はこのアンソロジーに入っています。
 未読なら超おススメっす。


 
03-10(土)

「女學生手帖」 大正・昭和の乙女ライフ  弥生美術館・内田静枝編






【内容情報】(「BOOK」データベースより)
大正~昭和初期の可憐で優美な乙女たちの世界!“エス”のせつない交流、女学生言葉、セーラー服図鑑、身の上相談や広告記事…乙女心をくすぐるエッセンス満載の、女学生ワールド。岳本野ばら氏特別寄稿。






<感想> ★★★★☆

なにやら怪しげなタイトルですが、旧字体で書かれている点にご注目ください。 本書は、大正末期から昭和初期にかけて出版された少女雑誌から当時の女学生の文化を多角的に紹介しています。 編者は高畠華宵や竹久夢二の作品を数多く所蔵、公開している弥生美術館学芸員の内田静枝さん。


さて、本書はあらすじに書かれているように、当時の女学生の生活様式や心理なども興味深く読めるわけですが、何はさておき注目に値するのは、当時少女雑誌の挿絵や表紙を数多く手がけていた大衆画家の作品群。 中原淳一、高畠華宵、松本かつぢ、加藤まさお、蕗谷虹次。 そして少女小説のカリスマ吉屋信子。  レトロファンならずしても、その美しさと資料的な価値には目をみはると思います。 ダテに弥生美術館の名前は出していません。


編者によれば、女学生たちの文化が最も花開いたのは大正末期から昭和15年までの間とのことです。  都市部に暮らし、それなりに裕福な家庭で育っていた彼女たちはとても幸せだったと思います。 しかし、その後に待ち受ける戦争は彼女たちにとって、あまりに過酷すぎる運命だったと言わざるをえません。 そう考えると、ちょっと違った読み方もできるかもしれません。

ちなみに4月5日~7月1日まで弥生美術館では「大正から始まった 日本のkawaii(カワイイ)」展が開催されます。 

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。